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                             水戸岡鋭治氏は、第3回会議のスピーカーではありません。
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  2010.3.3 更新

 JR九州をはじめ、さまざまな場所でユニークなモビリティデザインを手掛ける水戸岡氏。車両のデザインを飛び出し、駅や街の景色や移動の時間、旅、そして経済まで影響をしてゆくそのデザインへの考えを3回に分けてご紹介します。 第1回目は、「デザインのまなざし」。領域をこえて活躍される氏の仕事の基盤となるその視座とは、どのようなものなのでしょうか?

自他の壁をなくそう

はじめに、水戸岡さんのお仕事についてお聞きかせください。鉄道・列車のデザインを含め、どのような領域で活動をなさっていますか?

 デザインと名の付くものは可能な限りやっていくということが事務所の趣旨です。ですから建築から街作りまで、どうしてもからんできます。市や県の街作りの計画を作ったり、工業デザインとして車両、当然それに関わるホーム、駅、サイン計画や駅前広場とか、もっと言えばその中で行われる商業のあり方とか、そういうものを全部視野に入れてゆきます。もともと世の中は全部つながっていますから終わりはなく、車両があったら線路があり、ホームがあり、コンコース、駅ビル、広場、ずっと永遠に広がっていくので、それを全部俯瞰しながら対象を捉えます。仕事であろうと無かろうと、デザインは繋がっていますので縦割りでデザインを考えたことがないのです。いわゆる行政的に国土交通省だ経済産業省だなどと言っていては、ちゃんとしたものができない。政治・国家運営と大きく考えないと。同様にデザインも全てみなくちゃいけない。ですから、想いとしては全て可能な限り見られるものは見るとした中でのデザインの学習、進化と言うんでしょうか、それを追求しているつもりで仕事をしています。

なるほど、そこまで意識しているのですね。しかし、思いとは別に仕事が付いてこない人は多いのでは?

 そうだね(笑)ビジネスで考えるとチャンスは減りますが、お金を考えなければ仕事は増えるんですよ。皆さん困ってる訳で、例えば車両をデザインする時、車両のデザイン費しかなくても「そこのホームはどうなっているんですか、この車両が進む時のホームの色彩計画、素材、それからサインはどうなっているんですか?」と聞く。いやこれから。じゃあアイデア出しましょうかと、なった時に「タダ」だったらみんな喜びますよね? 私達は、極端に言うと3割〜4割がボランティアを続けてきています。だからタダで出来たものがいっぱいあります。けれどこれは学習するチャンスであり、初めての対象についてどうあるべきかを十分に考察できます。一つひとつ学習しながら、勿論建築も資格はなかったのですが、色々な人から教えてもらい自ら考えることで、法律的な所以外はほとんど解決できます。自分のイメージやシミュレーションが何所までたどり着くのか、ずっといつも考えるというのが大事です。 そして一回一回話すこと。どれだけコミュニケーションを豊かにするかです。仕事においては誰もが不安をもちますから、お互いに明快にしてゆくことがデザインの作業でしょう。先が見えないものを整理整頓してゆくことによって、紗がかかっているものが一枚一枚無くなっていき、その先が見えるようになっていく。見通しは効かない、でも一枚一枚。その作業がデザイナーの仕事そのもの、整理整頓清掃制作。その辺が僕らの仕事です。頭の中の整理整頓と、色形素材それから経営、マネージメント全ての整理整頓制作をすることです。それをイマジネーションみたいに抽象的なことは一切言わない。お互いが話が出来るよう、どう話をすれば相手が解るか、ということを繰り返しているだけです。 初めて船の設計をした時、造船所のプロに囲まれた中で、私は「素人です」って取材を始めた。「素人だから聞きますけど、これはどうしてこうなんですか?どうして、どうして」。ところが、みな答えられない。「昔からやっている」とか「法律でこうなった」とか。 「自分でこう思ったからこうしました」というのは希なのです。実は多くの場合、そういう感じに動いている。だからつまらない。「どうして?」をお互いにチャレンジに変えてゆく。今までやっていない事を少しでもと、納得しあえる事が一番大事です。好みが違うのは当たり前、でも「やろう!」と思ったなら、お互いしたいわけだから好みを超えてゆくということです。ですから、僕は不都合を受け入れてゆきます。自分の不都合をお互いが受け入れることで初めて、新しいモノが生まれてくる。ところが、多くは自分の不都合を受け入れないように、デザイナーも建築家もアーティストも自分を守ろうとしているが故に、結局は自分のやりたいことが出来なくなっていくという現状です。ただ相手がやりたいことを聞けばいい。どんどん聞いてやればいい。その厄介さを僕らが背負う事によって相手は安心して僕らに情報を出してくれる。その情報を調節して形にするのが僕たちですから。プロとしてそれを作るわけです。

水戸岡鋭治
(みとおかえいじ)
デザイナー、イラストレーター

1947年岡山県生まれ。建築・鉄道車両・グラフィック・プロダクトなどさまざまなジャンルのデザインで活躍を続けている。なかでもJR九州の駅舎、車両の斬新なデザインは、鉄道ファンの枠を越え、広く注目を集め、ブルネル賞・ブルーリボン賞・ローレル賞・日本鉄道賞・グッドデザイン商品選定など多くの賞を受賞している。主なデザインに、JR九州の新幹線800系、特急車両の885系、883系787系、西鹿児島駅、熊本駅ビル、岡山電気軌道の路面電車「MOMO」などがある。
株式会社ドーンデザイン研究所 主宰 JR九州デザイン顧問・両備グループ顧問
 

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